大柴広己全所有ギター解説
TRUTH TN-35 2001年製
はい、ついに来ましたメインギターの紹介です。
コイツと出会ったのは忘れもしない、おれが19歳の夏。
当時、始めたてのインターネットの掲示板を何気なくネットサーフィンしていたら、TRUTHと言う聞きなれないブランドのホームページにたどり着き、このなんとも言えない毒々しい色のギターと出会った。
いったいどんな人がどんな趣味でこんな色を塗ったんだろうと興味が湧き、使ってみたくなったので、怖いもの知らずで「モニターやらせてください、ぜったいプロになるので」と、作ってる職人とおぼしき人にメールをした。ちなみにこの文章をみんなにわかりやすく翻訳すると「おれ、ぜったい売れて、あんたのところのギターたくさん宣伝するからタダでくれよ。」である。怖いもの知らず、当時19歳の大柴広己。角刈り、天然パーマ。
普通こんなメールはスルーされそうなものなのだが(逆の立場でおれならスルーする)なんと奇跡的に職人の方からメールが届く。
とりあえずデモテープ持って工房に来い。と。
軽く小躍りし、日程を決め。
新幹線に乗るお金がなかったので、大学をサボって鈍行列車を乗り継ぎ、愛知県の弥富という街に着くと、いかにもその道ウン十年と言った、眼光は鋭いが平たい目つきのギタービルダー「福原」さんが迎えに来てくれた。
TRUTHギターは塗装&デザイン担当の福原さんと、木工の小野寺さんのたった二人で制作されている小さな工房で、到着すると思わず目移りするような制作途中のギターや、完成品とおぼしき変わった色のギターが掛かっており、弾きたくなる衝動がたくさんあったのだが「デモテープ持ってきたか?」の一言で急に現実に引き戻される。
工房の中にある木屑まみれの小さなラジカセからおれのデモテープがガチャリと音を立てて流れ出す。
今思っても、なんでそんなことをしてしまったのかはわからないが、当時のおれはCD-Rに収録できるほぼ限界の60分以上のデモをパンパンに詰め込んでしまったが故、一時間もの間、ひたすら無言ではじめましてのおっさんとおれが作ったつたないデモを聴くという、いかんとも形容しがたい時間が流れた。
自信のある二、三曲だけ入れておけばよかったものを。。
そして、その後、5時間にも及ぶお説教タイムが始まる。
「メロディーが良くない」「歌詞が何言ってるかわからない」「リズム感が悪い」「録音状態が悪すぎる」「どっかで聴いたことあるフレーズ使いすぎ」etc...
など、おおよそ考えられるありとあらゆるダメ出しを頂き、
「モニターやらせてください、ぜったいプロになるので」を翻訳した「おれ、ぜったい売れて、あんたのところのギターたくさん宣伝するからタダでくれよ。」のメールが頭の中で何度もループし、嗚呼、いったい自分はなんてメールを送ってしまったんだろう。と自分を恥じた。。
そんなこんなで、もう大阪に帰らないといけない時間になり、ありがとうございましたとお礼を言い、帰ろうとしたとき、最後のダメ出しがきた。
福「そもそもお前はやる気あるんか?」
その質問には全力で答えた。
俺「あります、絶対プロになります」
福「じゃあ、これ使ってみい。」
と、机にあったできたばっかりのピカピカのTRUTHギターを渡された。
おれは、何が何だかわからず、感動のあまり、ありがとうございますありがとうございますがんばりますといったい何回お礼を言ったかわからないくらいお礼を言って、真新しいハードケースとともに大阪に帰った。
オトナって、かっこいい。
と、本気で思った。
そして、ひとりの人間の夢を託されたと、
本気で思った。
このギターはそんな福原さんから託された世界に1本だけの大事なギター。
その後、長い付き合いになる。
TRUTHギターの福原さん。
あ、
長くなるけど、
もうちょい話していい?
大阪に帰宅後、それまで以上に曲作りやライブに本腰を入れて活動を本格化していった。おれ。
さらにデモテープはレコード会社ではなく、完成するたびにひたすら福原さんに送り続けるという生活が3年ほど続く。その都度50行くらいのダメ出しメールが届いて毎度凹むのだが、へこたれず送り続けた大学卒業前の22歳の春。
自信作ができた、と送ったデモテープの返事を待つと、やはり50行くらいのダメ出しメールが届き、またダメかと凹む。
だが、最後の一行はあまり見慣れない文章だった。
「今まで聴いた中では一番いいよ」
お?
これはもしかして初めて褒められたのか?と
試しにそのデモを3本だけレコード会社に送ってみた。
そして、そのデモテープがキッカケでおれはその年の翌年「ミニスカート」というアルバムでデビューし、名実ともにプロとしての生活をスタートすることになるのだが。
思い返せば、あの時のダメ出しは結局のところすべておれに必要な事だったのだ。
人を褒めることは簡単だが、その人に必要なことを瞬時に判断し、伝えられる人間は少ない、たとえそれが不器用なやり方だったとしても。
付き合いが長くなったおれの周りにいる大好きな人たちの中に、当時おれのことを褒めてくれた人間は1人も残っていない。残っているのは、真剣におれのことを叱ってくれた、そんな人たちだけ。
おれがレコード会社をクビになりそうだった27歳の時、一番に電話をくれたのも福原さんだった。
福「お前最近どうなのよ?」
俺「全然ダメですわ、レコード会社も事務所ももうクビになりそうでー」
福「それはどうでもいいけどな。お前はミュージシャンちゃうんか?」
俺「まあそうですけど」
福「俺は朝6時には起きて、メシを食い、遅くても8時には工房に行って仕事を始めて、一時間くらい休憩はすれど、夕方の17時くらいまで一日8時間はずっとギターのことを考えて、ギターに携わってるから、ギタービルダーでいられるんや。」
俺「そうですね」
福「じゃあ、お前はミュージシャンなら音楽のこと一日8時間以上考えられてんのか?」
俺「、、、」
福「上手くいかないこと事務所やレコード会社のせいにするんじゃなくて、お前がミュージシャンとしてやれることがたくさんあるやろ。がんばれよ。じゃあな。」
俺「、、泣」
一本のメール、そして、一本のギターがキッカケで大切なことに気づかせてくれたこと。
そして、いまもこうやってミュージシャンでいられること。
このギターはおれの音楽人生そのものです。
ずっと感謝してます。ありがとう。
TRUTH GUITAR工房「for M」
https://www.truth-guitar.com/
の、疑問が解決。w
改めて詳細知って感動。
バンドで爆音のこのギター
聞きたい!拝みたい!絶対に!
( ´Д` )♡