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2020.03.18 09:54
1 コメント
2020.03.18 00:43
大柴広己全所有ギター解説

FENDER TELECASTER 66年製

今から10年ほど前、東京の某楽器店のTさんより突然連絡が入った。
「大柴さんいいギター入ったんで買いませんか?エレキなんですけど。」

当時、アコギの弾き語りばかりやっていた自分にとって、エレキギターなんてものは範疇外。興味の対象にもならないものだったのだが、アコギフロア担当だったその人はおれの趣味もしっかりわかっていたはず。その上で連絡してきたんだなと思い、半信半疑で楽器店に向かった。

店に向かい、ドアが開いた瞬間、一本のギターに釘付けになった。

楽器を買う時、たまに光っている(ように見える)ギターがある。このギターは楽器屋の奥の方で、他のギターとはまるで違うオーラを放ち、煌々と光っていた(ように見えた)のである。

それが、まさにこのフェンダー・テレキャスター。

まず、色が今まで見たことがないような何とも形容しがたいクリームバター色で 、ビグスビーアームが後付けされ、ピックアップも古いギブソンのハムバッカーに変えられていた。何よりも目を引いたのはそのボディに謎の言語や年号がたくさん彫られていて、明らかにまともではない異彩を放っていた。

まさに一目惚れ。

そんなこんなでしげしげとギターを眺めていると奥から電話をくれたTさんがひょろっと出てきた。

「あー見つけちゃいましたか。やっぱり分かる人には分かるんですねー。連絡したギター。これですよ。」

聞けば、このギターはとある海外ミュージシャンがツアーの最中に何かの理由で手放した流れのテレキャスターだそうで、音はいいが、どこから出てきたものなのか出どころがハッキリしていなかったこともあり、店頭販売ではなく、懇意のプレイヤーに買って欲しいと連絡した一人目がおれだそう。

とりあえず、近くにあったアンプのボリュームをグイッと上げ、アンプに繋いで音を鳴らした瞬間衝撃が走る。

それは例えるならば、乾いた風を切るような、水面が揺れるような、ガラスを叩き割ったような、かと思えば母親のゆりかごのような、暖かな暖炉のような。とにかく、右手だけでありとあらゆる景色が描き出せる。そんな音がしたのだ。

これは、もはや自分のものだと思ったものの、66年のテレキャスターの相場はだいたい3桁。売れていない、なおかついままさにレコード会社をクビになったばかりの男に到底買える値段ではない。渋々Tさんに値段を聞いた。

「いろいろ手が入ってて、ボロボロなんで大柴さん買ってくれるなら20万でいいですよ」と。

即答で「買います!」

と言い、なんとか1週間待ってもらい、その間、各方面から現金をかき集め、わけありのテレキャスターがおれのものになった。

それ以来というもの10年にわたり、おれの録音やらライブやら、現場でフルに活躍している。
バンドで音を鳴らすことの喜びを教えてくれたのもこのギター。

余談だが、その後、手に入れて以来一度もギターの掃除をしていないことに気づき、重曹を染み込ませた布で拭いていたところ。それまでクリーム色だと思っていた色が剥がれ、下地から青い色が出てきたのである(左半分の色お分かりいただけるだろうか)
要は自分がクリーム色だと思っていたのは長年で汚れて付着したタバコのヤニで、もともとのコイツの色はソニックブルーと呼ばれる激レアカラー。現代の市場ではン100万で取引されるする超レアギターだったというオチがついたわけなのだが、このギターよりいい音がする楽器がないので、高級だとか関係なく今もガンガン使っている。

やっぱ楽器は使ってナンボよね。
4 コメント
4ヶ月前
GAMI
何故にこんな色しとるのん?
の、疑問が解決。w
4ヶ月前
大柴広己
そなのよ。笑。こーゆーエピソードがあったわけなのです。
4ヶ月前
カミュ。
読み進める毎に鳥肌。
改めて詳細知って感動。
バンドで爆音のこのギター
聞きたい!拝みたい!絶対に!
4ヶ月前
大柴広己
名古屋に行けてないからねーバンドで、、
4ヶ月前
デコ
大柴さん所有ギター解説🎸ギター詳しくないから用語分からないのに‪𐤔𐤔とにかく毎回夢中で読んでる•*¨*•.¸¸♬︎
4ヶ月前
大柴広己
用語すっ飛ばしても面白いでしょ。笑
4ヶ月前
yuri
文章の熱量が多すぎて一気に読めず。。途中休憩を入れて何とか読了
( ´Д` )♡
4ヶ月前
大柴広己
昨日寝る前に勢いで書いたから、その熱量がそのまま出たのね。笑
2019.11.15 12:27
大柴広己全所有ギター解説

TRUTH TN-35 2001年製

はい、ついに来ましたメインギターの紹介です。
コイツと出会ったのは忘れもしない、おれが19歳の夏。
当時、始めたてのインターネットの掲示板を何気なくネットサーフィンしていたら、TRUTHと言う聞きなれないブランドのホームページにたどり着き、このなんとも言えない毒々しい色のギターと出会った。

いったいどんな人がどんな趣味でこんな色を塗ったんだろうと興味が湧き、使ってみたくなったので、怖いもの知らずで「モニターやらせてください、ぜったいプロになるので」と、作ってる職人とおぼしき人にメールをした。ちなみにこの文章をみんなにわかりやすく翻訳すると「おれ、ぜったい売れて、あんたのところのギターたくさん宣伝するからタダでくれよ。」である。怖いもの知らず、当時19歳の大柴広己。角刈り、天然パーマ。

普通こんなメールはスルーされそうなものなのだが(逆の立場でおれならスルーする)なんと奇跡的に職人の方からメールが届く。

とりあえずデモテープ持って工房に来い。と。

軽く小躍りし、日程を決め。
新幹線に乗るお金がなかったので、大学をサボって鈍行列車を乗り継ぎ、愛知県の弥富という街に着くと、いかにもその道ウン十年と言った、眼光は鋭いが平たい目つきのギタービルダー「福原」さんが迎えに来てくれた。

TRUTHギターは塗装&デザイン担当の福原さんと、木工の小野寺さんのたった二人で制作されている小さな工房で、到着すると思わず目移りするような制作途中のギターや、完成品とおぼしき変わった色のギターが掛かっており、弾きたくなる衝動がたくさんあったのだが「デモテープ持ってきたか?」の一言で急に現実に引き戻される。

工房の中にある木屑まみれの小さなラジカセからおれのデモテープがガチャリと音を立てて流れ出す。
今思っても、なんでそんなことをしてしまったのかはわからないが、当時のおれはCD-Rに収録できるほぼ限界の60分以上のデモをパンパンに詰め込んでしまったが故、一時間もの間、ひたすら無言ではじめましてのおっさんとおれが作ったつたないデモを聴くという、いかんとも形容しがたい時間が流れた。
自信のある二、三曲だけ入れておけばよかったものを。。

そして、その後、5時間にも及ぶお説教タイムが始まる。

「メロディーが良くない」「歌詞が何言ってるかわからない」「リズム感が悪い」「録音状態が悪すぎる」「どっかで聴いたことあるフレーズ使いすぎ」etc...

など、おおよそ考えられるありとあらゆるダメ出しを頂き、

「モニターやらせてください、ぜったいプロになるので」を翻訳した「おれ、ぜったい売れて、あんたのところのギターたくさん宣伝するからタダでくれよ。」のメールが頭の中で何度もループし、嗚呼、いったい自分はなんてメールを送ってしまったんだろう。と自分を恥じた。。

そんなこんなで、もう大阪に帰らないといけない時間になり、ありがとうございましたとお礼を言い、帰ろうとしたとき、最後のダメ出しがきた。

福「そもそもお前はやる気あるんか?」

その質問には全力で答えた。

俺「あります、絶対プロになります」

福「じゃあ、これ使ってみい。」

と、机にあったできたばっかりのピカピカのTRUTHギターを渡された。

おれは、何が何だかわからず、感動のあまり、ありがとうございますありがとうございますがんばりますといったい何回お礼を言ったかわからないくらいお礼を言って、真新しいハードケースとともに大阪に帰った。

オトナって、かっこいい。
と、本気で思った。
そして、ひとりの人間の夢を託されたと、
本気で思った。

このギターはそんな福原さんから託された世界に1本だけの大事なギター。

その後、長い付き合いになる。
TRUTHギターの福原さん。

あ、
長くなるけど、
もうちょい話していい?

大阪に帰宅後、それまで以上に曲作りやライブに本腰を入れて活動を本格化していった。おれ。

さらにデモテープはレコード会社ではなく、完成するたびにひたすら福原さんに送り続けるという生活が3年ほど続く。その都度50行くらいのダメ出しメールが届いて毎度凹むのだが、へこたれず送り続けた大学卒業前の22歳の春。

自信作ができた、と送ったデモテープの返事を待つと、やはり50行くらいのダメ出しメールが届き、またダメかと凹む。
だが、最後の一行はあまり見慣れない文章だった。

「今まで聴いた中では一番いいよ」

お?
これはもしかして初めて褒められたのか?と

試しにそのデモを3本だけレコード会社に送ってみた。

そして、そのデモテープがキッカケでおれはその年の翌年「ミニスカート」というアルバムでデビューし、名実ともにプロとしての生活をスタートすることになるのだが。

思い返せば、あの時のダメ出しは結局のところすべておれに必要な事だったのだ。
人を褒めることは簡単だが、その人に必要なことを瞬時に判断し、伝えられる人間は少ない、たとえそれが不器用なやり方だったとしても。

付き合いが長くなったおれの周りにいる大好きな人たちの中に、当時おれのことを褒めてくれた人間は1人も残っていない。残っているのは、真剣におれのことを叱ってくれた、そんな人たちだけ。

おれがレコード会社をクビになりそうだった27歳の時、一番に電話をくれたのも福原さんだった。

福「お前最近どうなのよ?」

俺「全然ダメですわ、レコード会社も事務所ももうクビになりそうでー」

福「それはどうでもいいけどな。お前はミュージシャンちゃうんか?」

俺「まあそうですけど」

福「俺は朝6時には起きて、メシを食い、遅くても8時には工房に行って仕事を始めて、一時間くらい休憩はすれど、夕方の17時くらいまで一日8時間はずっとギターのことを考えて、ギターに携わってるから、ギタービルダーでいられるんや。」

俺「そうですね」

福「じゃあ、お前はミュージシャンなら音楽のこと一日8時間以上考えられてんのか?」

俺「、、、」

福「上手くいかないこと事務所やレコード会社のせいにするんじゃなくて、お前がミュージシャンとしてやれることがたくさんあるやろ。がんばれよ。じゃあな。」

俺「、、泣」

一本のメール、そして、一本のギターがキッカケで大切なことに気づかせてくれたこと。
そして、いまもこうやってミュージシャンでいられること。

このギターはおれの音楽人生そのものです。

ずっと感謝してます。ありがとう。

TRUTH GUITAR工房「for M」
https://www.truth-guitar.com/
5 コメント
8ヶ月前
カミュ。
鳥肌3回、ゾクゾクした!
ここ数年、ライブで聴けるのが貴重になってきた青鬼。イチバンかっこよくて、最高に震える。アコギにときめくなんて、思ってもみなかったよ。笑
ステキなお話しで、もっとtruth大スキになって大変。
なんかシアワセ。
長文おつー。ありがとね。
出逢えてよかった。
8ヶ月前
大柴広己
ボロボロになってきたからね、以前みたいに酷使はできんけど。また連れて行くよー。青鬼ちゃん。
8ヶ月前
GAMI
何回も読んだー、長いけどw そして、
ちょっと感動でホロリきましたw

今思えば、この子がいなかったら、こーやって、ここにはいないのかもなー。。初めて会った大柴サンは、この子を抱えて、とんでもねー(いい意味で)ギターさばきで、「なに?この人は!!」って、惹き付けられまくったから。

やっと、この子の事情知れて、嬉しい♪
この子抱えとる大柴サン、大好きー!!
早くまた、会いたい聴きたい♪
なので、近々ライブ予約入れますねーん♪w
8ヶ月前
大柴広己
自分の思い描く音は全部これ一本で出せちゃうのよね。ライブで待っとるよー
8ヶ月前
.+:。 ☆エリィ☆。:+.
長文、読み進めていく中📖
唯々、ただただ、泣けた😭
(言葉にできない感動。。。ありがとぉ✨)
8ヶ月前
大柴広己
二時間くらいかかったなあ、書くの(遠い目
8ヶ月前
あこ◇
ギターとの出会いは、人との出会いでもあるのですね✨素敵なお話をありがとう💕
8ヶ月前
大柴広己
まさにそのとおり。
8ヶ月前
yuri
昨日から何度も読み返しています
福原さん、素敵な御方ですね
角刈り天然パーマの19歳を信じて支えてくださって
そしてこんなにも強靭なミュージシャンになられた大柴さん
お互いに応えあったのですね。見えないもの信じたお二人の絆みたいなもの。

あーはやくおーしばさんのお歌とギター聴きたいです( •̆ ·̭ •̆ )
8ヶ月前
大柴広己
角刈りってところがポイントですね。笑
2019.11.06 14:03
大柴広己全所有ギター解説

GIBSON L-50 1945年製

このギターを手に入れたのはたしか7枚目のアルバム「Mr.LIFE」のレコーディングをしていた前後だったから、2016年くらいだったと思う。
インターネットの広告ページを深夜ボーっと見ていたらたまたま出ていたコイツを見つけて、なんとなくお茶の水の楽器店に予約を入れた。

正直この手のバイオリンみたいなピックギターと呼ばれるギターは昔何本か弾いたことや所有したこともあるが、とにかくちゃんと鳴る個体に出会ったことがない。どれもペシャペシャな生音だったり、弦高がバカ高くてむちゃくちゃ弾きづらかったり。と。そんな経験もあってかそこまで期待していなかったが、その時たまたま印税も入り、気持ちが大きくなっていたタイミングも相まって、弾きに行くことに。

カランカラン音がする昔の喫茶店のようなドアを開けると髭面のいかにもといった感じの店主が件のギターをチューニングしていた。いいギターってのは自分が弾くより他人が弾いているのを聴く方が良い音だってのがあるんだけど、まさにそんな感じで、コロンとしたバーボンやブルースが似合うような程よく枯れたいい音だった。

もうその音を聞いてるだけで十分だったので、ろくすっぽ弾かずに。即買った。

あとで聞いたところによると、この個体は1945年製。戦後すぐに生産されたギターだとのこと。
半世紀以上も経って、我が家に来ることになったということを想像するだけでもロマンではないか。

そんな感じで、テキトーに買った割に、このギターはいつも自宅リビングの端っこに立てかけてあり、名目上は作曲用のギターとしてぼくの晩酌のお供になっているこのL-50。ちなみにこのギターで作曲したことは一曲もない。笑。けど、もしかしたらここ数年一番触っているギターかもしれないなあ。

この先ジジイになったら、このギターがもっと似合うようになるのかな。なんてことをまたも想像するだけで、今日も酒はうまいのである。
3 コメント
8ヶ月前
.+:。 ☆エリィ☆。:+.
1945年✨この子の歴史はきっといろんなお酒のある風景を見てきてて、持ち主の一番リラックスしてる時間を共に過ごしてきた子、なのかもね~🎸これまた素敵な出逢い🥃
8ヶ月前
大柴広己
生活に馴染む音がするよね。この子は。
8ヶ月前
yuri
その音を聞いてるだけで十分だった…即買った。
そして今ではいちばん触っているギターかもしれないなんて。
そんな出逢い ずるいです!!笑
8ヶ月前
大柴広己
だいたい手元に残ってるギターはそんなエピソードばっかりのギターです。笑
8ヶ月前
カミュ。
fホールってダケでトキメクようになったのは『ありのまま』のMV見てからだと思う。
このタイプのギターめちゃくちゃ似合うと思う🤤👍
8ヶ月前
大柴広己
あーたしかに。fホールかっこいいよねー。
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2019.10.14 13:55
4 コメント
2019.09.09 17:41
大柴広己全所有ギター解説

GIBSON J-45 66年製

何を隠そう、ぼくが一番最初に買ったマトモなギターがこのギターである。いや、正確に言えばマトモなのはブランドと品番のみで、あとはとんでもなくひどいギターだった。というのが正しい。

このギターを買ったのはまだ高校生だった18歳の時。
雑誌の通販ページをペラペラとめくっていたらこのギターが広告に載っていた。確か値段は20万円くらいだったと思う。

ギブソンのJ-45と言えば、いわゆる世界で最も有名なアコギのひとつで、サンバーストと呼ばれる茶色いボディのやつはよく見かけていたのだが、塗り潰しの真っ赤なカラーに白いピックガードが付いているモデルは初めて見たので、思わずそのページに釘付けになったのをはっきりと覚えている。

販売していたのは埼玉の中古楽器店だった。それ以来ほぼ毎日のようにぼくはその楽器店に「あのギターはまだ売れていないか?」「予約の電話はまだないか?」などと、向こうからすると、はたまた迷惑な電話をかけまくり、スーパーの鮮魚コーナーで、魚の内臓をゴミ箱に捨てるだけと言う心身ともにエモいバイトをえづきながら1ヶ月間毎日続け、お金を貯めて購入した思い入れがあるこの楽器。

埼玉から大阪の実家に届いた時、まず最初に興奮したのは僕ではなく母親(むつこ74歳)の方で、ヤマトさんからギターが届くなり、いの一番にダンボールからギターを取り出し、早く弾いてみなさい。だの、どんな音がするのかねえ?だの僕を焦らせるむつこ。僕のせっかちな性格はどうやら母親譲りらしい。でもそりゃそうか。20万近い楽器がウチに届くなんて、小さい頃にピアノを買ってもらって以来だもんな。。

てなわけで、ハードケースから取り出されたそれは想像してたよりもはるかにボロボロで、傷を通り越してあちこちが陥没している状態。ペグなんて腐っててまともに回らないし、明らかに木が割れてる箇所があったりしたのだが、なんとかチューニングし、とりあえずEコードを鳴らしてみる。

「ジャ〜ン!」

その時の家族の顔を未だに忘れることはない。

すっごい、ひどい音だったのだ。

むつこ「20万のギターってこんな音なんかねえ?」

みのる(父)「ばかもの、この乾いた感じが本来のギターの音というものなのだ」

ゆきえ(祖母)「おばあちゃんにはわからんわあ」

たみえ(妹)「音、悪っ」

具体的に言うなら、とにかくネックが完全に逆側に鬼反りしていて、いわゆるギターの低音の概念などまるでなく、ただペラペラのペシャペシャの干物のような音。
ネックも異常なくらい細く、元柔道部上がりのぼくのゴツい手にはあまりにも頼りない、そんなギターだった。
その時のぼくの目は、あのバイトでゴミ箱に捨てられた悲しいマグロの目のような顔をしていただろう。
ああこれはきっとマグロの呪いだ。悪い夢だ。
20万も出してわざわざこんな鳴らない見た目だけのギターを引き当ててしまうなんて、、おれはなんて愚かなんだ。。


そんなこんなでバイトも辞め、傷心し、このギターをなんとかいい音だと自分に思い込ませるためにシコシコ毎日弾いていたところ、すぐ近所に凄腕のギターリペア職人がいると言う噂を聞きつける。

それが枚方の川沿いにある「アウトプット」ギターと言う店で。ここに通うことがぼくの人生を大きく変えることになる。

学校から近かったこともあり、学校帰り、店にギターを持ち込み、店長であり、リペアマスターの園尾さんにギターを見せたら、一言。

「あー、こりゃきみ。つかまされたね。ガハハハ」

と言われ、このギターに何が問題があるかを訥々と1時間ほど教えられ、即、入院と相成ったわけで御座います。

それ以来というもの、学校の部活(柔道部)終わりにアウトプットギターに通う生活が続く。

マスターは店に行くといつもブラックコーヒーを入れて、マッキントッシュの古いアンプからアナログのレコードをかけてくれた。ジェイムス・テイラー。ダニー・ハサウェイ。ボブ・ディラン。オーティス・レディングやサム・クックにニール・ヤング。
ぼくが音楽をまだあまり知らないと言うと、これを聴けと毎回アルバムを一枚貸してくれた。

アナログレコードと、コーヒーの匂いと、床に散らばったエロ本。笑。が、ぼくのこの店での思い出だ。

ここに通うようになり、飲めなかったブラックコーヒーが飲めるようになった。音楽や、ギターの概念はリズムだってことを教えてくれたのも。この店。

学校の部活に行き詰まってたことも相まって、そんなこんなで、そんな生活が三ヶ月ほど続いたのち、ギターが直り、マイクを取り付けたり、ブリッジをかえたり、フレットをかえたり、ペグを新品に取り替えたり、ボディの中の力木を再接着したりして、大改造の果てにこのギターは生まれ変わった。

最初に弾いた時の感触を忘れられない。

干物とか言ってごめんなさい。
生まれ変わったその音はまさにヴィンテージと言えるジャキジャキとした乾いた音で、深く、どこまでも続く青い海みたいな音だった。ボディは赤だったけどな。

そのまま閉店まで「帰れ」と言われるまで何時間も弾いていたぼくは、この楽器がきっかけでまんまとヴィンテージ楽器と、音楽そのものの魅力にハマっていくことになる。

そして、それから大学に進学し、23歳でデビューして、東京に出るまでの5年間、ほぼ毎日店に通い続けた。

あれから20年だった今も、たまに顔を出すと、昨日もきたような顔で「おー」と迎えてくれるマスター。

今はすっかり現場に投入されることも少なくなってしまったこのJ-45だけども。いまもこのギターを弾くと、そんな学生だった頃の記憶と、ブラックコーヒーの匂いがふっとフラッシュバックする。

これは、そんな人生を変えるきっかけをくれた大事なギターだ。

余談だが、おれが使っている赤いテレキャスターのネックの裏には園尾マスターのサインが書いてある。

今なら、こう、はっきりと言える。

最初、音悪いとか言ってごめんな。

だけど、きみと、アウトプットギターがなかったら、きっといまのおれはいなかったよ。

おれを、プロのミュージシャンにしてくれて、本当にどうもありがとう。
7 コメント
10ヶ月前
GAMI
なんか。。拍手!w
この子のおかげで今の大柴サンにワタシも会えたんかな♪
お賽銭投げて拝みたいです、神やねw
10ヶ月前
大柴広己
ははーっと。もしもステージに登場した際にはお祈りください。
10ヶ月前
まっとん
アウトプットギターはまだあるんでしょうか?凄く気になる(^^)
10ヶ月前
大柴広己
まだありますよー。京阪枚方市駅より徒歩10分。
10ヶ月前
.+:。 ☆エリィ☆。:+.
なんか、、ありがとう(笑)✨あの時の18才のまぐろの様な悲しい目をしてたキミも。。アウトプットギターさんも。。
10ヶ月前
大柴広己
こちらこそ、なんかありがとう。笑
10ヶ月前
yuri
素敵なおはなし✧‧˚
ギターと共に語られる大柴ヒストリー 知れば知るほど今まで以上に大柴さんのうたがギターが色濃くささってしまいます
(´□`)⇒グサッ!!‪‪❤︎‬
10ヶ月前
大柴広己
いま残ってる楽器はみんな何かしらのエピソードがあるギターばっかりですよ
10ヶ月前
ゆうこはん
えぇ話や😭
この子も大柴さんと出逢えて幸せやね〜✨
10ヶ月前
大柴広己
こいつに出会わなければきっとここまで音楽できてないですね
10ヶ月前
晴爛漫
偶然とか必然とかより、運命的な出会いという言葉が似合いますね!そこから始まったドラマは続くんですね~✨
10ヶ月前
大柴広己
人生はドラマ、ギターもドラマ。
10ヶ月前
カミュ。
このコ赤鬼かな?
青鬼truthと赤鬼が並んだひとりオーケストラ。ステキなライブだった思い出。
こんなに詳しく出会いを知ったのはじめてかも。
ふぁ、ファンクラブ入ってよかったわ。笑
音も他のコ達のコトも、また聞かせてね。
10ヶ月前
大柴広己
徐々に解説していくわ。笑。お楽しみに。
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カギを開ける
2019.09.04 22:45
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カギを開ける
2019.09.04 21:55
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