2021.02.12 23:56
5年近く愛用してるダイソンの掃除機が壊れた。

それも、プツンと音を立てて、
うんともすんとも言わなくなった。
そう、ほんとうに突然に。

お別れはいつだって、
こんな風に予期してないタイミングで訪れるのだなあって思った。

ってことで、いまさら新品家電買うのはなんともバカバカしいので
近くのリサイクルショップにエッチラオッチラとワーゲンを走らせる。

壊れた掃除機を横目に、何を買うか悩みつつ、
リサイクルショップまでの道のりを30分、新しいアルバムのラフミックスを聴きながら向かう。

新しい掃除機。

きっと世の中にはたくさんの選択肢があるにはあると思うのだが、
ダイソンの掃除機にすることだけは、はっきりと心に決めていた。

なぜかって?

違うのに変えたら、
なんか自分に負けた気になるからだ。

まあ、いわゆるシンプルな見栄だ。

ダイソン持ってるぜ。って言う自分のプライドを失いたくないだけだ。
嗚呼、なんと小さき男。

おれ大柴広己、乙女座38歳天然パーマ。

とか何とかやってるうちに、
ブゥンと目的地に到着。

自動ドアが開いて、おすすめコーナーを回って、
ちょうど奥のあたりに掃除機コーナーはあったはずだとキョロキョロしていると、
そこにはたくさんの掃除機たちが、おれの到着を今か今かと待っていてくれた。

目当てのダイソンはそれはそれは棚の上に仰々しく、
安いダイソン、普通ダイソン、高級なダイーソンと並べてあり、
それぞれ値段は8000円、15000円、26000円のプライスカードが付いていた
(ちなみに全部かなり安い。ちなみに高級なやつだけ伸ばし棒つけたのは、なんか他のと違う感じを出したかっただけで、他意はない。)

昔のおれなら、迷うことなく「この一番安いやつくださいな。」
って言って終わってたところなんだが、
今までの経験が。いや、童話に出てくるようなあの池の妖精が
突如として、頭の中でおれに語りかけてきた。

「あなたが壊したのはこの安いダイソンですか?それともこの高いダイソンですか?」

と。

そこで、とあることに気づいた。

売られている一番安いダイソンは、
よく見ると今までおれが使っていたものと全く同じものなのだ。

そりゃまあ。

今まで使っていたものを買うのは、もちろん、
使い方もわかってるし、吸引力だってじゅうぶん信頼してる。
なおかつ、いつもの子がいてくれるってゆー安心感だってある。
値段も手頃だし、買わない手はないだろう。

と、思うのだが、

はたしていまのおれは現状維持を狙う男であっていいのか?

おれをだれだと思ってるんだ?
あのおれだぞ?ただのモジャモジャじゃないんだぞ?
そこそこ頑張ってんだぞ?Wikipediaにだって載ってるし、、、、(以下文字数

ということで、消去法で普通ダイソンを購入しようと思い
手を伸ばしたその瞬間。また別の妖精がザブンと池から顔を出した。

「大柴ーぁ。そんな選択をするからお前はずっと凡人なんだよー」

そう、たしかこれは昔、尊敬しているプロデューサーに言われた言葉だ。

あれはさること15年前、デビューアルバムのレコーディングの際、
スタジオの乾燥でうまく歌えなかったおれは、スタジオに持ち込む加湿器の導入を考えていた。
結局、悩んだ結果購入したものは一番安いものはなんかアレだし、一番高いものは予算的にアレだし、
ってなもんで、ちょうど真ん中のクラスの加湿器を購入し。
スタジオに持ち込んだその刹那、
プロデューサーが言い放ったあの言葉だ。

「その高いとも安いともどっちともつかない選択をするおまえが、
今の右にも左にもうまくいかないお前の人生を象徴してんだよ。」

と言われ、妙に納得した。
あのかんじ。

くっ、なぜお前(妖精)がその言葉を知ってるんだっ。

いかんいかんと首を振り。

あの日の自分はもう卒業したんだと、
自分に言い聞かせるように、それはそれは前傾姿勢で、
おそらく昨日入ったばかりであろうピカピカの
「研修中」の名札のついたメガネボーイを颯爽と呼び出し。
あの時のプロデューサーばりにおれはこう言い放った。

「あの一番高いダイソンください」

颯爽とレジでお金を支払い(カードで)
レジ袋いりますか?の問いに、
愚問と思いつつ、いりませんと答え。
でかいが全くモノが入らない、
愛車ワーゲンビートルの中に無理やりダイソンを押し込み、
ブルンとエンジンをかけた。

どうだいメガネボーイ?
こんなモジャモジャでもなかなかやるだろ。
きみもおれくらいの年齢になったときに、このダイソンを持てるくらいの男になるんだぜ。バーイ。

と、まぁ思ってもいないようなアホウな去り台詞を頭の中で語りかけてるうちに、
自宅に到着し、無駄にデカイ最高級ダイソンが我が家にやってくることになったわけである。

いやぁ、しかし改めて見るとおれのダイソンかっこいいなぁ。

無駄に木目調の掃除機スタンドが、ついてたり、コードレスだったり、
配管がオレンジだったりと、見た目的に最高にイケてる。

なんか仕事とか人間関係で嫌なことがあったとき、
もしも暗い家に帰って、このダイソンがいてくれたら。
「なあーに、おれにはコイツがついてるから何の問題もないぜ」
って明日も頑張れるかもしれない。

などと独りごちて、来月のカードの支払いにビクビクしながら呑むウイスキーは今日もうまい。

おれのダイソンこれからよろしく。

おやすみなさい。